オルソンの円環モデル(Olson's Circumplex Model)
オルソンの円環モデル(Olson's Circumplex Model)とは、家族の機能を測定する尺度の一つです。名前の通りオルソンが開発しました。
この尺度では、家族の機能を3つの側面から評価します。
①適応性(Flexibility)
②凝集性(cohesion)
③コミュニケーション(Communication)
です。
それぞれの内容を見ていきしょう。
適応性:状況的・発達的危機に対して、家族システムの勢力構造や役割関係などを変化させる能力
低い方から、「硬直(rigid)」-「構 造化(structured)」-「柔軟(flexible)」-「無秩序(chaotic)」の4段階で評価されます。
凝集性:家族成員がお互いにもつ情緒的なつながり
低い方から、「遊離(disengaged)」-「分離 (separated)」-「結合(connected)」-「膠着(enmeshed)」の4段階で評価されます。
コミュニケーション:凝集性と適応性の両次元を促進させる働きを持つ
変数は以下のものがあります。
話題の一貫性
尊重と注目
明確さ
表現の自由
共感
傾聴
自分のことを話す
他者のことをかわりに話す
さえぎり・割り込み・決めつけ
この家族機能尺度は、全次元とも中間のレベルで、働く事がもっとも機能的であり、問題のない健康な家族が位置し、高すぎても低過ぎても家族は機能的でなくなるということが一般的に言われているそうです。
参考情報
神谷葉南(2012)「中学生からみた家族の家族機能と家族満足度に関する研究」
サヴァン症候群(savant Syndrome)
サヴァン症候群(savant Syndrome)とは、自閉症をはじめとするさまざまな発達障害を持つ人が、驚くべき能力や才能を発揮する稀な疾患です。
先天性(遺伝的なもの)の場合もあれば、小児期以降、あるいは大人になってから後天的に発症する場合もあります。
自閉症の約10人に1人〜3人が何らかのサヴァン能力をもっていると言われています(Happé, Wallace, 2012)。逆にサヴァン症候群の約50%が自閉症と診断されているという結果もあります(Treffert, 2010)。
したがって、すべてのサヴァン能力が自閉症であるわけではなく、また、すべての自閉症患者がサヴァン能力者であるわけでもありません。
サヴァン能力には、さまざまな種類があります。
最も一般的なサヴァン能力は、スプリンター能力と呼ばれるものです。
例えば、音楽やスポーツの雑学、ナンバープレート、地図、歴史的事実、掃除機のモーター音などの曖昧なものに執着し、それを記憶するような行動が含まれます。
また「才能のあるサヴァン」という、特に高い技能をもった人のことを指す言葉があります。才能のあるサヴァンの中には、音楽、芸術、数学、その他の特殊技能が、通常、単一の専門領域などで特化した技能をもっています。
このような特殊技能の高い閾値を満たす天才的なサヴァンは、現在、世界中に75人以下しかいないそうです。
参考情報
F. Happé, G.L. Wallace(2012) Encyclopedia of Human Behavior (Second Edition)
Treffert, D. A. (2010). Islands of genius: The bountiful mind of the autistic, acquired, and sudden savant. Jessica Kingsley Publishers.
SSM Health. Savant syndrome (https://www.ssmhealth.com/treffert-center/conditions-treatments/savant-syndrome)
神経症(neurosis)
神経症(neurosis)は、2022年現在、いくつかの精神精神疾患の総称とされています。
不安障害、気分障害、物質使用障害、身体表現性障害、摂食障害、人格および行動障害、統合失調症などが含まれます。
「神経症」という概念は、精神疾患の概念でよく依拠される、DSM(アメリカ精神医学会が出版している、精神疾患の診断基準・診断分類)の定義の変遷があります。
「神経症」はDSM第2版までは掲載されたのですが、1980年にDSMの第3版が発行されときに削除されました。代わりに上記のいくつかの障害として細かく記載されるようになったそうです。
この改訂には、批判的な意見もあります。
それは、この改訂に医薬品業界の意向が大きく関与しているのではないかということです。
診断基準の拡大が「精神障害者」の数を増やし、「正常な」行動を病理化し、何千、何百万という新しい患者が、善よりも害をもたらすかもしれない薬物にさらされる可能性がある
といった主張があります。
これはつまり、そこまで問題はないとされてきた範囲の症状を、「〇〇障害」や「〇〇病」とカテゴライズすることで、人々にその症状を病気と認識させる、そして、その治療として医薬品を購入させる、という構造への批判ということです。
米国では、DSMのこの改訂に対して、心理学会やカウンセリング協会を中心に署名運動もおこったようです。
参考情報
D. Watson(2001), International Encyclopedia of the Social & Behavioral Sciences
Nursing Times, Controversy over DSM-5: new mental health guide, (https://www.nursingtimes.net/news/behind-the-headlines/controversy-over-dsm-5-new-mental-health-guide-24-08-2013/)
Psychiatric Times, Is the Criticism of DSM-5 Misguided? (https://www.psychiatrictimes.com/view/criticism-dsm-5-misguided)
逆転移(Counter transference)
逆転移(Countertransference)
クライエントが、過去に重要な他者(両親など)との間で生じさせた欲求、感情、葛藤、対人関係パターンなどを、別の者(多くの場合は治療者)に対して向ける非現実的態度を転移(transgerence)といいます。
逆転移は、クライアントがセラピストに転移を向けた時の、クライアントに対するセラピストの対抗手段です。
フロイトは、セラピストの逆転移を、クライアントの転移に対するセラピストの感情や反応であり、それは「セラピスト自身の未解決の無意識的葛藤の結果である」と概念化しました。
例えば、父親が極度に競争的だったセラピストは、競争的なクライアントに対して激しく競争的な感情を持つことがあるといいます。
フロイトは、逆転移反応は治療の障害であり、セラピストは、自身の逆転移について分析し解決すべきだと考えました。
しかし今日、逆転移は、感情、連想、空想、一瞬のイメージなど、クライアントに対するセラピストの反応の総体として、より広く定義される傾向にあります。
研究途上の心理学では、転移をもっぱらクライアントの歪みとして、あるいは逆転移をもっぱらセラピストの未解決の無意識的葛藤から生じているものとして概念化することは不可能です。
クライアントの特性や分析中のクライアントからセラピストへの微妙なコミュニケーションも、逆転移に寄与することがあります。
逆転移は、セラピストにクライアントに関する情報を提供し、治療上大きな利益をもたらすと考えられています。
しかし、それ自体に危険がないわけではありません。
精神分析に関する著作の中には、逆転移の経験がクライアントの無意識の経験に関する絶対的な情報源を提供すると仮定し、逆転移に対するセラピスト自身の独自の寄与を過小評価する傾向があるといいます。
参考情報
J.D. Safran, E. Gardner-Schuster(2016) Encyclopedia of Mental Health (Second Edition)
集合的無意識(Collective unconscious)
集合的無意識(Collective unconscious)は、ユングが唱えた理論です。
継承された本能的な傾向の意識的な現れであるアーキタイプの識別
(the identification of archetypes seen as conscious manifestations of inherited instinctive tendencies)
や
人の先祖代々受け継がれてきた記憶の貯蔵庫
(storehouse of memories inherited from a person's ancestral past)
とされています。
ユングは、フロイトの弟子として無意識の概念をさらに深化しました。その中で、心の構造を、「意識的自我」、「個人的無意識」、「集合的無意識」の3つの大きな構造に概念化しました。
中でも集合的無意識は、すべての人に共有され、時間をかけて発展し、時代を超えて世代から世代へと受け継がれてきた無意識で、一般的な知恵の集合知も含むとされています。
集合的無意識の主な役割は、ある状況に対して、ある方法で反応するように個人を仕向けることができることです。これによって、個人を最大限に成長させることができるといいます。
例えば、個人の集団が集まるときはいつでも、何らかの社会秩序を確立しようとする自然な傾向も集合的無意識の一つです。このような知識は(遺伝的知恵)は世代から世代へと受け継がれるため、個体は新しい世代ごとに一からやり直す必要がなく、人間の生存のための作業がより容易になるという利点があります。
参考情報
B.J. Carducci,(2016) Encyclopedia of Mental Health (Second Edition)
Solomon, M. R. (2004). Consumer psychology. Encyclopedia of applied psychology, 1, 483-492.
去勢不安(castration anxiety)
去勢不安(castration anxiety)はJ.フロイトが提唱した概念の一つです。
Johnstone et al.,(2010)では、
父親が自分の去勢をするのではないかという脅威を感じる、子どもの妄想。
とされています。
フロイトは、5〜6歳ごろの子どもは、異性の親に対する愛と欲望の無意識的な感情を発達させると考えました。そして異性の親を独占したいという空想と、同性の親に対する攻撃的な空想が生まれるとしています。
男子の場合このような感情は、無意識のうちに父親を殺して母親と結婚したエディプスにちなんで、エディプス・コンプレックスと呼ばれます。
(知らず知らずのうちに母を愛し、父を殺したギリシャ神話のオイディプス王からとられているそうです。)
フロイトは、男児において、エディプスの幻想に対する罪悪感が去勢不安、つまり、を「子どもの敵対的衝動に対して、父親が自分のペニスを切り取って報復するのではないかという不安」が生じると考えました。
エディプス・コンプレックスは、子どもが同性の親と同一視することによって、これらの相反する恐怖と欲望を管理することによって解決されるといいます。
このプロセスの一環として、子どもは同性の仲間を求めることがあります。エディプス・コンプレックスとの交渉が成功すれば、その後の人生において安全な性的アイデンティティの基礎となるのです。
参考情報
Johnstone, E., Cunningham-Owens, D. G., & Lawrie, S. (2010). Companion to psychiatric studies e-book. Elsevier Health Sciences.
Stern, T. A., Fava, M., Wilens, T. E., & Rosenbaum, J. F. (2015). Massachusetts general hospital comprehensive clinical psychiatry. Elsevier Health Sciences.
フォーカシング(forcusing)
ユージン・T・ジェンドリンが提唱した、こころと体の関連の機能を用いた心理技法の一つだそうです。
国際フォーシング研究所によると
気づきや情緒的な癒しを生み出すための体験的でからだを重視する方法
日本フォーカシング協会によると
静かに、心に感じられた「実感」に触れ、そこから意味を見いだす方法
とされています。
ジェンドリンは心理療法において、ポジティブな心理的変化がみられる患者の特徴として、「非言語的で身体的な感じにアクセスする能力」があることだとしています。その能力をジェンドリンは「フェルトセンス(felt sense)」と呼んだそうです。
そして、ジェンドリンは誰でも自分のフェルトセンスにアクセスできる方法として「フォーカシング」技法を生み出した、とのことです。
参考サイト
「国際フォーカシング研究所」https://focusing.org/sites/default/files/legacy/jp/Eugene-T-Gendlin-Press-obituary.pdf
「日本フォーカシング協会」https://focusing.jp/