漸成説(epigenetic theory)
漸成説(epigenetic theory)
生物の発達の過程を示す理論です。
心理学辞典によると、
生物の形態や構造が、発生の過程を通じて分化することにより,漸次に形成されていくという説であり,前成説と対立する。
とされています。
ここに書いてある前成説とは、心理学辞典によると、
生物において発達を遂げる諸組織・器官は,発生の出発時すでにおのおのの萌芽をもっており,それらが予定調和的に次々と開花していくのだという説のこと
とされています。
少し説明がややこしいですが、簡単にまとめると以下ということでしょうか。
つまり、
漸成説とは、「生物の発達は、諸所の環境などの影響を受けて漸次的に変化していく」
という考え方で、
前成説とは、「生物の発達は、予め決まった到達点に向かって徐々に形成されていく」
という考え方の違いということです。
前者は、生物の発達に際限はないと考え、後者は際限があると考えるのでしょう。
漸成説は、
発達心理学における機能発達の一般原理として発展した
前成説は
17〜18世紀に流布した生物発生についての一つの考え方
19世紀に入って否定し去られた。
とされているので、漸成説は私たちにとっては疑うことのない当たり前のこととして意識されているのでしょうね。
しかし前成説も、
20世紀も後半になって,分子生物学の知見が明らかにされるにつれ,じつは萌芽がDNA情報として染色体に貯えられており,さらにそれらを開花させるためにのみ作用する遺伝子も発見されて,今日リバイバルしつつある。
と説明されており、遺伝子の類によっては、予め決まった到達点に向かうものもあるということのようです。
参考
中島, 増生, 子安, 算男, 繁桝, 裕司, 箱田, 清志, 安藤, 雄二, 坂野, 政夫, 立花 (1999)「心理学辞典」『有斐閣』